
(中小企業の経理はずさん?建設業経理として働く女性にお話をお聞きしました)
経理という仕事は、所属する会社の規模によって仕事内容が大きく変わる職業です。
中小企業の場合は仕事の難易度はそれほど高くなく、未経験者でも転職できる可能性があります。
その一方で、「中小企業の経理はずさん」といわれることもありますね。
特に、建設業は業界的にずさんな経理処理をしている企業も少なくないようです。
今回は、従業員50人ほどの建設業の中小企業で経理として働く女性に転職の体験談をお聞きしました。
ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
中小企業の経理はずさん?私が体験した仕事内容
体験談をお聞きした方のデータ
- お名前 :春木さくら
- 年齢 :38歳
- 在職年齢:32歳~6年間在職中
- 雇用契約:正社員(課長職)
- 年収 :400万円
- 会社規模:従業員50名程の中小企業(建設業)
私は、経理事務として従業員50名ほどの中小企業に勤務しています(役職は課長職です)
いわゆる建設業なのですが、男女比率が7:3と建設業にとっては珍しく女性が多い職場です。
女性は主に事務や営業に従事していて、男性は機械のオペレーターや運転手、作業員の方が大半です。
親方気質で、言い方がきつかったりしますが人情、仁義あふれる優しい人たちが多いですね。
建設業経理の特徴は?
公共事業を相手にしていますので、安定して仕事があります。
忙しい時には下請けに外注を出すときもありますし、元請けとして依頼されることもあります。
建設業というと汚くてきついイメージがありますが、みなさんが普段何気なく見ている道路や建物は建設作業員がきちんと仕事をした結果です。
安全安心を当たり前のように感じれるように私も経理事務として微力ながらお手伝いしています。
中小企業の経理をしていて「仕事がずさん」と感じることはありますか?
確かに、中小企業の経理は大手企業の経理と比べると「ずさん」と感じる部分も少なくありません。
大手企業のように公認会計士の監査が入るようなことはありませんし、株主総会で「ものいう株主」から突っ込まれるようなことはないでしょう。
(なお、中小企業でも顧問税理士さんのチェックは毎月受けています)
しかし、中小企業というのは経理がずさんだとすぐに経営が傾いてしまうという特徴があります。
私自身は毎日緊張感を持って仕事をするようにしています。
中小企業の経理に緊張感が求められる理由
中小企業の経理担当者は、銀行にちゃんとお金があるか、従業員への支払いがきちんとできるかといったことに常に気を払わなくてはなりません。
ずさんな経理処理をしていると銀行の融資審査で不利な扱いをされてしまいますし、ずさんな申告書を税務署に出すと税務調査が来てしまいます。
建設業は決算の組方によって利益が大きく変わることもありますので、税務署ににらまれるようなことがないよう、ずさんな経理は禁物です。
中小企業の経理は経営者と非常に近い距離で仕事をしているのも特徴です。
経理としてキャリアを築きたい方は大手を目指す人が多いと思いますが、中小企業の経理もやりがいのある仕事だと私は思っています。
中小企業経理の仕事に向いている人はどんな人だと思いますか?
↓私の場合は建設業ですが、経理事務に向いている人の特徴は以下の3点だと思います。
- 数字が好きな人
- 追及して考えるのが好きな人
- 思いやりがある人
3つめの「思いやりがある人」は意外に感じるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。
それぞれの特徴について、順番に説明いたします。
1.数字が好きな人
経理は常に数字を相手にしています。
いつも数字を見ていると少しの変化でも『なにか違う』と感じるようになってきます。
- 「単価がいつもと違う」
- 「売上の上がり方が不自然だ」
- 「経費こんなに使ったのか」
- 「推移表から日々の売上より、どれだけの純売上があったのか」
- 「月によって経費が違うのはなぜなのか」
などなど、ずさんな処理に対しては「嗅覚」のようなものが働くようになってくるのです。
まるで、数字と対話でもするように数字を扱うのは、経理独特の感覚ですね。
なお、経理ができるかどうかは「数学が苦手かどうか」はあまり関係ありません。
極端に言えば、足し算・引き算・掛け算・割り算がちゃんとできる人なら経理はできます。
勉強のできるできないより、数字への嫌悪感、苦手意識があるかどうかが大切です。
「数字は見るのも嫌、みていると頭が痛くなってくる」という方は厳しいと思いますが、普通の感覚で数字と向き合える人なら何の問題もありません。
2.追及して考えるのが好きな人
上記でも説明しましたが、経理はちょっとしたことに疑問を抱くセンスが必要です。
なぜ経費が上がったのか、なんでいつもと数字の上がり方が違うのかなど、ずさんなまま放置すると、経営が傾いてしまう事態になることも珍しくないからです。
ずさんな状況を察知したら、その原因は何なのか、しっかりと追及しなくてはなりません。
原因がはっきりしないと間違った答えを出し、指針がずれて悪化してしまう恐れもあります。
見て見ぬふりをする人や「多少ずさんだけどこのくらいの答えでいいか」と考える人は経理には向いていないです。
もちろん、ある程度の知識で経理としては活躍しますが、経理の管理職などは務まらないと思います。
3.思いやりがある人
意外かもしれませんが、経理という仕事には「思いやり」やコミュニケーション能力がとても重要です。
ここでいうコミュニケーション能力とは、「おしゃべりが上手い人」という意味ではありません。
思いやりを持って話せる人が良いコミュニケーションと考えています。
はっきりいって、経理とは嫌われる職業です(特に営業さんからは…)
「もう少し経費を抑えられませんか?本当にこの経費が必要なんですか?と追及されるのは誰でも嫌でしょう。
こういうときにも思いやりを持っていれば、怒らせるような事にはならないと感じています。
経理は売り上げを直接生み出す仕事ではないので、一緒に働く人たちとのやりとりには配慮が必要なのです。
経理の仕事の給料に不満はありますか?
私の現在の年収は400万円です。
今の給与体系は額面が30万で手取りが25万円ほど、ボーナスを合わせると年間で400万円ほどになります。
経理課課長という立場を任されていますが、他の業種の課長クラスだともっと多くもらっている人も正直いますね。
同じスキルを持っていても会社の規模や業種によって違うので不満はありますが、中小企業の建設業界では妥当な金額だと思っています。
経理が給料を上げてキャリアアップしていくには?
↓経理としてキャリアアップしていくには、以下の3つのことが必要と思っています。
- 管理職になって複数のスタッフをまとめられる立場になること
- 大手企業でも対応できるよう高度な会計や税務の知識を身につけること
- 単なる経理事務だけでなく、財務データに基づく戦略提案などもできるようになること
やはり経理という仕事は大手ほど給料が高いです。
大手企業の課長クラス以上なら年収600万円〜が相場でしょう。
私ももっと経験を積んで、ゆくゆくはこうしたキャリアを目指すことも考えています。
会社の経営状況から、売上を上げるためには何をしたらよいのか、費用が上がった原因はなんなのか、経営戦略の視点を持ち会社全体の利益を上げるように的確な進言ができるようにもっと勉強していきたいです。
建設業経理で持っていると有利な資格
建設業の経理では土木施工管理技士という資格があれば重宝されます。
他にも運行管理や、安全衛生管理士などの資格も建設業経理には重要ですね。
会社で何を求めているか把握し、経理関係以外の勉強もして付加価値を高めていくのが年収アップのポイントになると思います。
会社にとってなくてはならない存在になれば、自ずと給料も上がってくると考えています。
中小企業経理の働く時間や残業・休日出勤の有無について教えてください
現在、正社員として9時から18時で勤務しています。
残業は、月末月氏の請求書、月次決算の処理、給料計算で追われた時に発生しますが、それでも月に10時間未満です。
残業分は30分単位で時間外手当が支給されています。
給与体系が月末締めの翌10日払いなので、処理をするためにゴールデンウイークやお正月に休日出勤をすることもあります。
休日出勤をすれば、もちろん給料が割り増しになりますが、急に子供が熱を出てお休みした時の振り替えとして休日出勤を選択する人も多いです。
中小企業の経理にはどうすれば転職できますか?
まったくの経理実務未経験の方なら、まずは簿記の勉強をある程度してから、派遣社員としてスタートすることをおすすめします。
私はパートで始めましたが、派遣の方が時給がかなり高いです(時給1700円〜の求人もあります)
まずはパートや派遣として入って、半年ぐらいして正社員に切り替え、というパターンはとても多いです。
経理の正社員求人は実務経験者が基本になるので、未経験者がいきなり正社員を目指すのは難しい場合が多いです(不可能ではないと思いますが)
簿記3級から勉強スタート
私のケースですと、日商簿記2級が難しかったので3級から勉強をスタートしました。
また、当時は子供が小さかったので無理なくパートから入りました。
パートや派遣でも与えられた職務は責任を持って最後までやることが大切です。
期日よりも早く正確に書類を提出することを心がけていたので、信頼してもらえたのだと思っています。
子供の成長と共に正社員へなれたのでこの点は本当に良かったです。
まずはパートや派遣で経理の実務経験を積むのが近道
経理の求人は、正社員の場合は経験者採用としている企業がほとんどです。
しかし、この「経験者採用」というのは実はそんなにハードルは高くないです。
パートや派遣で1年ほど経験を積めば、正社員の求人にも挑戦できるようになります。
経済的にパートは無理という方は、派遣社員で経験を積んでみるのも手です。
派遣と言っても派遣会社で社保に加入することもできますし、紹介型予定派遣という制度を使えば短期間で正社員にもなれるでしょう。
これからまったく未経験から経理キャリアをスタートするなら、経理事務派遣として働き始めるのがもっとも近道だと思いますよ。
↓経理事務の派遣求人はこちらのサイトにあります。
↑こちらはスキルアップのための無料講座も開いていますので、私はそこで基本的なPCの講義を受けて、面接の時にアピールできました。
応募したい業種の勉強ができますし、スタッフもみんな親切でしたよ。
経理で応募する場合、どうすれば面接時に好感が持たれますか?
私は経理課長として面接官をさせて頂くことも多いです。
以下、「こんな方だと好印象だな」と思う人の特徴を紹介していきます。
↓経理として面接に行く際には、以下のようなポイントに気を配ってみてください。
- 丁寧な履歴書
- 身だしなみ
- ハキハキとした受け答え
- SNSを見てきた
1.丁寧な履歴書
何人も面接をしていると適当に書いた履歴書と、一生懸命書いた履歴書はすぐに分かります。
特に自己PRは、一行しか書いてない人、よくあるものを真似して書いた人、とてもよく表れやすいです。
上記に対して、きちんと独自の自分を表し、丁寧に書かれた履歴書はとても好印象です。
2.身だしなみ
調べればすぐに分かるのに、まだジーンズとスニーカーで面接に来る方が見えます。この時点でアウト。
経理はパートでもスーツで行くべきです。
また、ドアを開けた瞬間をよく見ます。
きちんと靴を揃える、挨拶をする、お辞儀をする、コートを脱いで入室する、一式できていると『おっ!』と思います。
3.ハキハキした受け答え
経理はコミュニケーションを大事にします。
売上の相談をしに所属長へ聞きに行き、この買い物は固定資産に回したくないと税理士と打ち合わせ。
さまざまな方との話し合いは避けて通れません。
下を向きながらボソボソと話す方は、『大丈夫かな?』という印象を受けてしまいます。
きちんと相手の目をみて、お話ししましょう。
4.SNSを見てきた
過去に、実際にSNSを見てきたという方がいらっしゃいました。
SNSでこういう所に感銘を受けて応募したと仰っていて、『見てくれてありがとう』という気持ちになりました。
とにかく経理がしたいという方は、なぜこの会社へ?と応募動機に迷っている方も多いのではないでしょうか。
そんな時、SNSを見るのをオススメします。
SNSでなくてもホームページだけでも見て行くと、面接時の受け答えの引き出しが増えると思います。
会社の事を調べて来てくれたんだなと関心します。
中小企業経理の仕事が楽しい、やりがいがあると感じる瞬間はどんなときですか?
たくさんの方たちとコミュニケーションを取りながら、自分なりの経理としての意見を考えている時にやりがいをかんじています。
経理事務として働いていると、どうしてこの経費が必要だったのだろう?仕入れの原価率が上がったのはなぜだろう?と疑問になる事があります。
疑問を解消するには、従業員とのコミュニケーションを取り、常に正しい情報を掴むことが重要になってきます。
最近あった具体的なエピソード
最近、ライバルの会社が値上げをしていたので売上が増えていったのですが、最終的な下請けの会社も値上げをしていたので、逆に利益が下がってしまったことがあります。
- 値上げを検討する場合、お客様にはどれだけ理解してもらえそうか
- 利益率をどのくらいまで上げなければならないか
- そのためには従業員にどの程度協力してもらえるのか
↑こういった件について所属長や従業員とコミュニケーションを取り、考えを精査して経営陣へ進言しました。
自分の考えを参考にしてもらえた時、こんな私でも役にたっているんだなと、とてもやりがいを感じます。
中小企業経理の仕事で「ここがつらい・しんどい」という点を教えてください
しんどいなと思う時は、コミュニケーションが上手くとれなかったときです。
例えば、業績が悪いときに「どうして利益が上がらないのか」という質問に答えづらい所属長もいます(聞き方を間違えると怒らせてしまうこともしばしばあります)
また、利益を上げるよう解決策を提案するときもありますが、これも言い方を間違えると「何様なんだ」と嫌われる羽目になってしまいます。
経理とは嫌われる役目でもあります。
上手くコミュニケーションが取れないと従業員から嫌われ、経営陣へも報告できないので八方塞がりになり退職を考えるようになっていく人も少なくありません。
そうならないように、話をするときは相手の立場にもなり、思いやりを持って接し、人と人とのつながりを大切にすることを心がけています。