経理への転職は実務経験がとても重要になりますので、未経験者にとっては少しハードルが高くなるというのが実際のところです。
もちろん、未経験だから絶対に無理ということではありません。
当たり前のことですが、経理職としてキャリアアップしていっている人たちも最初は経理未経験でした。
あなたもその人たちと同じように、順番にステップアップしていくことができれば長期的に経理職としてステップアップしていくことはじゅうぶんに可能です。
ただ、入口の入り方(つまり転職活動の進め方)を間違えてしまっていることが原因で、いつまでも内定が出なくて経理キャリアのスタートラインに立つことができない…という人は少なくありません。
ここでは経理未経験の方が具体的にどのようなキャリアプランに従って行動していけば良いのか?について解説させていただきます。
「現在は経理未経験だけれど、将来的に経理の専門職としてキャリアアップしていきたい」という方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
この記事の目次
未経験から経理転職を成功させるためのキャリアプラン
一般的に未経験者(特に男性)の経理転職は厳しいと言われていますが、きちんと段階を踏んでステップアップしていければ問題ありません。
具体的には、以下のようなステップをふんでいくようにしましょう。
①簿記2級を取得する
未経験者から経理転職を目指すなら、簿記資格が必要です。
企業側としては簿記知識のない人を採用してしまうと、時間をかけて基本的な知識を教育すると言う手間が増えます。
簿記の勉強というのは会社に採用されなくてもできることですから、「経理職としてステップアップしてくことを目指しています」ということをアピールしたとしても、
「でも、簿記の勉強はまだしていません」ということでは「本当にやる気があるのかな?」と思われてしまいます。
未経験者の場合、簿記資格は3級取得は必須条件と考えましょう。
2級になるとややハードルが上がるので、転職活動を行なっている時点ではまだ勉強中ということでも問題ないでしょう。
応募書類を作成するときには、
- 平成○年○月:日商簿記3級合格
- 平成○年○月:日商簿記2級試験を受験予定
といったように、具体的にいつ頃取得予定なのか?ということがわかるようにアピールするようにしましょう。
②経理事務派遣で経験を積むのも一つの選択肢
経理は未経験者の場合、正社員での募集はなかなかないのが実際のところです(特に男性は未経験だと採用されにくいです。逆に、経験者だと男性の方が採用されやすいです)
「経験者じゃないと厳しい」というのが現実ならば、「早めに経験者になってしまう」のがおすすめです。
経理の実務経験者というとなんだかハードルが高そうな感じがしますが、実はそれほど難しいことでもありません。
例えば、「派遣スタッフとして経理事務の仕事を半年程度やったことがある」という人であったとしても、転職活動では「経理実務経験者」という扱いをしてもらえます。
経理事務の派遣は時給も高いですから、お金を稼ぎながら実務位経験を積むことができるのもメリットの一つと言えますね(だいたい時給1500円〜が相場です)
③会計事務所や派遣で実績を作る
企業経理の前に、会計事務所で実績を作るのもおすすめです。
会計事務所とというのは、税理士の個人事務所のことで、税理士資格がなくてもスタッフを募集していることがあります。
会計事務所のスタッフは基本的に税理士試験の勉強をしている人たちですが、必ずしも税理士を目指していなくても正社員として採用される可能性はあります。
また、会計事務所のスタッフはほとんどが男性ですから、男性で経理としてキャリアアップを目指している方も未経験から業務に入っていきやすいと思いますよ。
会計事務所では決算業務の経験がたくさん積める
会計事務所(税理士の事務所)の仕事内容というのは、ごく簡単にいうとお客さんの企業(中小企業がほとんどです)に依頼されて、決算業務を代行するという感じです。
経理は普通、自社の決算を年に1回か2回しか経験することができませんが、会計事務所に勤めた場合には年間で20件〜30件の決算業務を行うことになります。
例えば3年間つとめたとしたら、通常の経理スタッフだと3回〜6回の決算業務経験しか積めないのに対して、会計事務所では60件〜90件の決算業務を経験できることになります。
経験値に圧倒的な差が出るのは明らかですよね。
会計事務所のデメリット
ただし、会計事務所を選ぶのにはデメリットもあります。
第一には、良くも悪くも会計事務所というのは所長税理士の個人事務所であることです。
従業員数は5名程度のところがほとんどですから、スタッフの管理は所長税理士がみずから行なっているということが多いです。
その分、ワンマン的な経営がされていて、事務所の雰囲気があまりよくない…ということも少なくないですね(もちろん、そうでない事務所もありますが)
また、従業員数名の個人事務所ですから、「1つの会計事務所に定年退職までつとめあげる」ということは普通ありえません。
会計事務所のスタッフとして働いている人たちは、多くは将来的に税理士資格を取得して独立開業するか、中小企業〜大手企業の経理職として転職していくというキャリアプランを組んでいます。
税理士を目指していないという方であれば、会計事務所での勤務は経理としての実務経験を積むため、と割り切っておくのが良いでしょう。
経理分野の実務経験を積むという意味では、会計事務所はもっとも適した職場と言えますから、選択肢の1つに入れてみることをおすすめします。
経理で入社したあとのキャリアプラン
次に、経理転職後のキャリアプランについて、どんな業務が経験でき、どのようにステップアップしていけばよいのか確認していきましょう。
最初は会計入力から
未経験で入社すると、しばらくは会計入力などのルーティンワークがほとんどでしょう。
勘定科目や勘定CDを覚えるなどの単調な作業が続くと思いますが、ここがすべての基本になります。
私は簿記の勉強を思い出しながら、仕訳や消費税区分、その会社の取引内容などを覚えていきました。
この段階でわからないことを積極的に質問しておくと、他の仕事(決算業務の補助など)を任されたときに理解しやすくなります。
経理の仕事は会計入力だけじゃない
経理の仕事は会計入力だけではありません。
社員の経費精算内容に不備があれば指摘しなくてはいけませんし、取引のある銀行担当者とうまく付き合う必要もあります。
会計監査や税務調査のように、会社の経理、税務がきちんと処理されているか外部の調査が入った場合は、会社の事業内容や業績、取引内容の正当性、会計や税務処理の妥当性を説明する必要もあります。
私は決算担当者として、会計監査と税務調査を経験しましたが、最初は質問の内容を理解するのも苦労しました。
上司や担当部署と何度もやりとりするのは大変でしたね。
それでも、自分で会計や税務を勉強すると対応できることが増えてくるので、楽しさも感じていました。
経理は、一般社員は閲覧できない重要書類を確認し、その内容について説明することもあります。
社内で認められれば、重要な仕事を任されますし、他部署からも相談されることが多くなります。
経理業務を一通り経験したあとのキャリアプラン
最後に、経理業務を一通り経験した後は、どのようなキャリアプランが考えられるかを確認していきましょう。
経理部門の責任者
会社に残って、経理責任者として仕事をしていくことができます。
事業内容に精通し、金融機関とのパイプを持っていれば、会社にとっては非常に重要な人材といえるでしょう。
そのような人材は簡単には育てられません。
後任の育成をしながら、役員として経営に参加していくこともできるはずです。
経営企画で経営に関わる
経営企画で経営に関わっていくという選択肢もあります。
データ分析や経営会議の資料作成、運営など、経理と仕事内容は異なるものの、経理経験が生かせる仕事です。
経理は経営企画とのやり取りが非常に多いので、どのような仕事をしているのかをイメージしやすいのです。
経理業務での経験を、会社経営で重要な役割を果たす経営企画で活かすのは、選択肢の一つになります。
今回は、経理未経験の方がこれから経理分野でステップアップをしていくことを考えた場合の具体的なキャリアプランについて解説させていただきました。
結論的には、経理職というのは未経験から大手企業に採用されるのは難しいため、
①派遣の経理スタッフとしてお給料を稼ぎながら実務経験を積む
②会計事務所の正社員として働きながら実務経験を積む
この2つの方法を通して「経理実務経験者」として転職活動を行うのがおすすめです。
未経験で最初から大手企業の経理職などに転職活動をしてしまうと、失敗する可能性が高くなってしまいますので注意しておきましょう。
経理事務の紹介予定派遣から正社員への登用確率をアップさせるポイント
「紹介予定派遣とは、初めは派遣社員として業務をスタートして、6ヶ月間の派遣期間が終了した後にはそのまま正社員として採用される形の雇用形態です」
と聞いていたのに、正社員登用の段階になるといつもそこで打ち切られる…という方もひょっとしたら多いかもしれません。
実は私もそうだったんです(当時20代後半男:経理未経験でした)
初めは「契約社員や普通の派遣だと人が来てくれないから、そうやって募集を出して人を集めてるのかな…」と思っていたんですよね。
もちろんそういう企業も中にはあるとは思うんですが、実は当時の私の働き方や意識にも問題があったのかなと(現在は一応経理の管理職になっています。小さな規模の中小企業ですが)
今回は、経理事務の仕事で「紹介予定派遣→正社員」で途中終了にされないようにするために気をつけておくべきポイントについて解説させていただきます。
そもそも紹介予定派遣を正社員にしないのは法律的にOK?
まず「紹介予定派遣として募集して、結果として正社員に採用しない」というやり方は法律的にOKなのか?ということを確認しておきましょう。
結論からすると、これはOKです(違法ではありません)
一応「なんでダメなのか?」という理由を派遣先から派遣会社に対して通知してもらうことは可能ですが、採用しないことに関しては法律上問題はないことになっているんですね。
断ることはOKではあるものの、ちゃんとした理由がない場合や、セクハラなどが原因というような場合には派遣会社から派遣先の会社に対して損害賠償請求がされるようなケースは少なからずあるようです。
(男性だからだめ、女性だからダメ、というような理由で採用しないのもルールとしてはNGです)
また、あまりにも正社員への登用確率が低すぎたりすると行政処分が行われるようなこともあるみたいです。
経理事務男性が紹介予定派遣で正社員に登用されるために注意すること
経理事務の仕事で紹介予定派遣として働く場合には、次のようなポイントでマイナス評価をされないように注意しておきましょう。
特に男性は経理事務派遣では少数派になるのはやむを得ないところですから、直属の上司(女性であることも多い)との関係を悪くしないように注意が必要です。
経理事務でいきなり「帳簿を見せてください」はNG
紹介予定派遣であったとしても、本当に経理職として登用するかどうかは会社としてもわかりません。
派遣社員はあくまでも派遣会社の社員ですから、派遣先の会社では情報をどこまでみせるか?については慎重な判断をしていると考えるべきです。
なので、この段階で「帳簿を見せてください」とあまりおおっぴらに依頼するのはNGと考えておきましょう。
帳簿や過去の決算書というのは、会社の経営状態がすべて分かってしまう重要書類です。
小規模な会社の場合には社長や役員のプライベートな部分がかなりわかる情報もありますから、外部の人間にそういった情報を見せることはどの会社でも敬遠するものです。
経理として一日でも早く業務を理解したい!という気持ちはわかりますが、企業に対して一般常識がないと判断されてしまいます。
派遣社員である期間中は、「与えられた業務範囲をしっかりこなす」という意識で取り組むことが大切です。
派遣期間中は、派遣会社の指示命令系統に従う
紹介予定派遣期間中は、その指示命令系統は派遣会社(派遣元)にあります。
いくら派遣先の社員と仲良くなったとしても、雇用契約をいきなり派遣先と結ぶようなことはできません。
あなたが派遣社員から正社員になった時には、派遣先企業は派遣会社に対して手数料を払うことになります。
あくまでも派遣先と派遣元との合意のもとにあなたの処遇は決まるというルールになっていますから、ひとりで突っ走って派遣先と契約するというようなことをしてしまうと、後でトラブルに発展する可能性があります。
女性上司や同僚との付き合い方に注意!
経理事務は、女性社員が多い職場であることが普通です。
その環境から上司が年配女性であることもごく普通にあるでしょう。
これは私の個人的な体験談も含むのですが、年配の女性上司や同僚とうまくやっていくのはよほど
特に、紹介予定派遣というのは比較的最近できた制度ですから、「昔はこんな形で入社してくる人はいなかった」というように排他的な意識を持っている人ももしかしたらいるかもしれません。
また、職場には正社員の人ばかりではありません。
アルバイトや契約社員として仕事をしている人たちは、「正社員に登用される予定の人」ということで自分たちの職場に入ってきたあなたのことを必ずしも好意的に見ていない可能性もあります。
私の場合は、ミスをしたときに「男はいいよね、女がそのミスをしたら、注意どころではすまないんだから。一気に仕事ができないという評価をくらってしまうのよ」というようなことを言われたことがあります。
大したことではなくても、大げさになってしまう傾向があるのです。
女性に対しては、ちょっとした態度の悪さが敏感に評価につながってしまう可能性があります。
何かをしてもらったら必ず「ありがとうございます」という、相手の話を最後までじっくり目を見て聞く、などなど、細かいコミュニケーションには気をつかいましょう。
正社員に登用される確率が高い求人情報の見つけ方
経理事務で紹介予定派遣の求人を探す時には、「そもそも正社員の登用を積極的にやっている会社なのか?」を慎重に判断する必要があります。
「そんなこと入社前にわかるの?」と思われる方も多いと思いますが、正社員への登用を積極的に行なっている会社の求人にはいくつか特徴があるものです。
また、求人情報をよく読むと「男性経理職を求めているのか、それとも女性経理職を求めているのか」もなんとなくわかってきます。
男性の経理事務の紹介予定派遣から正社員登用を狙うなら、以下のようなポイントを見ておくと良いです。
①「特別な会計システムを使用しています」の文言
経理事務の場合、「特別な会計システムを使用しています」という文言がある求人は要チェックです(正社員への採用が積極的である可能性が高いです)
あえて「特別な」と言っているのは、その会計システムを今まで使いこなせていた正社員欠員が出たので、その人の穴をうめられる人材を探している背景がうかがえます。
会計システムというのはその企業独自のカスタマイズをするためにシステム会社に発注しているようなケースもあるため、使いこなすのに時間がかかったり、社内の特殊な事情を理解していないと使えなかったりするケースがあるのです。
そうなるとその会計システムを使う人間は正社員でないとダメ、ということになる傾向があるのです。
このような記載がされている紹介予定派遣があれば、男性、女性を問わずその特別な会計システムを使いこなせる人を探しています。
つまり、正社員として男性でも経理職へ登用される可能性が高いですよ、という企業側からのサインと見ることができます。
②産休や育休制度の文言をチェック
これはわかりやすいポイントですね。
例えば、求人案内に「産休育休しっかりとれます」ということをアピールする記載があれば、女性の募集が多い可能性が高いです。
いうまでもなく男性に「産休」はないためです。
女性は結婚して退職する可能性も高いですし、出産がそのきっかけになることもあります。
女性割合が高い経理事務職は、この女性の結婚出産による退職という慢性的な問題を抱えている可能性が高い部署です(問題、という言い方はちょっと問題ですが、企業の立場としては欠員が出るのが非常に痛い…というのは確かです)
あえてこの記載をするということは、過去に産休を取得した女性社員がいたことがうかがえます。
細かいことですが、こういうところにも企業側の意図が見えていることがありますよ。
③「求めている人材」を見る
求人に「求めている人材」などが記載されている場合、「長く社員として勤務できる方」「全国勤務の可能性があります」というものがあれば、これは男性を募集していることが多いといえます。
また、「経理職マネージャー候補」といったように、管理職への登用をうかがわせる記載も男性経理を探している企業には多いですね。
「スタッフのとりまとめやマネジメント経験がある方は優遇」という文言がある求人は、男性の正社員採用への可能性が高い求人と言えますから、たとえこういった経験がなかったとしても積極的に応募していくと良いでしょう。
④年収の幅(はば)を見る
年収に関しても、例えば「正社員登用後350万円〜700万円」といったように、極めて幅が広くなっているものも要チェックです。
これは企業としては嘘を書くことはできないポイントですから、上限値については実際に在籍している(あるいは過去に在籍していた)社員の実績値である可能性が高いです。
年収700万円となると管理職であることは間違いありませんので、その採用枠で募集をかけているということは、長期的に働いてくれる経理職(基本的に男性を想定しているはずです)を探していると思われます。
⑤転職エージェントに内情を探ってもらう
派遣会社などの人材紹介会社に所属する転職エージェントは、企業をまわって採用についての情報を普段から集めて回っています。
必然的に「その企業が正社員になってくれるを求めているのか、それとも派遣社員で十分なのか」といったことについても情報をたくさん持っているものです。
また、職場の雰囲気などから「派遣は使い回し」というような意識がある職場なのか、といったことも敏感に察知しているものです(転職エージェントはこういう細かい情報を集められるかどうかが勝負の仕事なので)
転職エージェントはあなたの代わりに年収の交渉をしてくれたり、「この会社は面接ではこういう受け答えの仕方がいいですよ」といった具体的なアドバイスをたくさんしてくれますので、積極的に活用すると正社員採用への道はぐっと近くなりますよ。